仲介取引以外の不動産売却方法 売却専門エージェント / 不動産オークション / 競売
不動産売却の様々な手法
相対取引の変形版「売却専門のエージェントサービス」
従来の不動産売却手法は仲介業者が間に入った「相対(あいたい)取引」が大半でしたが、最近では目新しい名称を使った売却手法が乱立しています。たとえば売主代理人として売却のみを専門とする「売却専門エージェントサービス」や市場の競争原理により価格を決める「不動産オークション取引」です。
「相対取引」とは、市場を介さずに当事者同士で売買を行なう方法で、「“売主1人“ 対 “買主候補1人“ の関係」で双方の合意によって取引条件が決定します。現在の不動産取引の大半が相対取引で行なわれています。
そして、相対取引の変形版と言えるのが、売却を専門とする「売却専門エージェントサービス」です。くわしくは後述しますが、「売主の利益を最大化(高値売却)する」ことを目的として買主側を担当しないことで、「売主の代理人」という立場をアピールしています。
つまり、「高く売りたい売主」と「安く買いたい買主」の両方を仲介する行為は、利益相反となり、売主の希望価格を下回る可能性があるからです。その他のサービスとしては、売却戦略をカスタマイズして提案したり、専任媒介契約や担当エージェントのランクに応じて仲介手数料を値引いています。
高値売却の手法としては、買主側の仲介会社と粘り強く交渉したり、買主側の代理もする場合は「買主側仲介手数料」を価格に上乗せしています。
競争入札による「不動産オークション取引」
「不動産オークション取引」とは、競争入札による市場原理によって取引の「相手方」と「価格」を決定する方法で、「“売主1人” に対して “買主候補多数”」の設定により競争入札を行ない、最高値の入札者が落札者となります。
オークション主催者は、オークション運営のために売主と買主の双方の仲介をするものの、入札である以上、価格決定の過程に仲介者の恋意性が入る余地はありません。また「不動産オークション取引」には、インターネットを使ったオークション(競り上がり方式)と入札書(紙媒体)によるオークション(ポステイング方式)があります。
競売や公売競争原理で価格が決まる
「競売」と「公売」の違いとは?
競売
競売とは、債務者が債務を履行しなかったときに、債権者が裁判所に申し立て、債務者や担保提供者が所有する不動産を、裁判所の管轄下で強制的に売却して債権を回収する制度です。
公売
また公売とは、国や地方自治体が税の滞納処分を独自に行なうもので、国税徴収法に基づき、官公庁が滞納税金の回収のために差し押さえた不動産を換価する手続きのことです。
競売と公売の違い
競売と公売の違いは、債権者が民間で管轄が裁判所となる競売に対し、債権者が官公庁で管轄が国または地方公共団体なのが公売となります。
また、対象不動産に非協力的な占有者が存在する場合、競売では引渡命令の・申立てによる強制執行制度がありますが、公売では所有権に基づく明渡請求訴訟を提訴し、勝訴した上で強制執行となるため、競売と比べて時間と費用を多く要します。
その他では、「市場価格より2~3割安い」「入札方式で売却される」等、競売と公売はほとんど同様のシステムとなっています。
競争原理が「市場相場の上限価格」を引き出す
競売や公売による入札方式では、地域によって違いはありますが、人気がある地域では落札価格の上昇や入札本数の増加、高水準の落札率等の傾向が続いています。
ある民間調査によれば、2014年上期の関東エリア1都3県(東京・神奈川・埼玉・千葉)における不動産競売物件は、2010年以降は減少傾向にあるものの、入札状況は高水準を維持しており、落札率は東京地裁本庁の99.1%を筆頭に、周辺地域でも90%台後半の高い落札率を維持しています。
また落札価格も上昇が続いていて、「対売却基準価額の講離率中央値」は各都県で1・5倍超となり、とくにマンションでは横浜地裁本庁の1・81倍を筆頭に、軒並み1・6倍超と落札価格の上昇が続いています。
競売も公売も、より多くの回収を公平に行なうことが目的なので、入札方式という競争原理が買手の購入意欲を刺激して、落札時点(売却時点)における「市場相場の上限金額」を引き出すことになっているのです。
「相対取引」と「不動産オークション取引」
相対取引のメリット・デメリットとは?
「相対取引」の最大のメリットは、早期売却(早期換金)が可能となることです。買主候補に順次購入打診していく中で、早い時期に購入意思を示す買手が現われれば即交渉に入り、取引を成立させることができます。
一方、デメリットは、「早く売れても、高く売れる可能性は低い」ということです。意思表示の早い順に優先交渉権が与えられるため、市場での他の購入可能性を検証し切れないまま取引に踏み切ることになり、好条件の買主候補をみすみす逃してしまうことにもなります。
「オークション取引」では、多数の購入打診で時間を要する反面、市場の最高値で売却できる可能性が高くなります。複数の買主候補に同時に購入の検討を進めてもらい、入札期日に一斉に入札を受け付けることで、意思表示の先着順ではなく、入札価格の高い順で落札者を決めることができるのです。
「時間重視か、価格重視か」で使い分ける
売却手法の選択は、売主自身の事情に応じて使い分けることが最大の利益につながります。たとえば納税期限が追っていて、一刻も早く不動産を現金に替える必要がある場合では、早期に売却が期待できる「相対取引」が適しています。
不動産会社には、「こんな不動産が売りに出たら教えてほしい」といった「買い注文」が日頃より顧客から寄せられているので、数社の不動産会社に直接問い合わせれば、価格の高い安いはさておき、具体的な買手がすぐに見つかる可能性はあります。
しかし、相続等で共同相続人が存在したり、不動産が共有関係にある場合では、取引手法や価格決定の過程に対する「透明性」や「納得性」がないと利害関係人間の合意形成が図れないことも多くあります。
そうした透明性や納得性を重視するのであれば、時間をかけてでも多くの買主候補に対して購入を打診する「オークション取引」が適しています。購入可能性がある複数の買主候補により行なわれる競争入札について、経緯から入札結果まですべて開示されるため、「なぜこの買手に、この価格で売却するに至ったか?」が明確になります。
「売却専門エージェントサービス」の仕事とは?
売主の代理人として、売主側の仲介のみを行なう「売却専門エージェントサービス」が最近増えています。各社のサービス内容は様々ですが、共通するのは売主の利益を最大化(高値売却)することを目的としたサービスを打ち出していることです。たとえば地域や物件の特徴に合わせた価格設定や広告、建物の室内の見せ方をアドバイスする等、高値売却するためのプランを立案したり、売却活動では買主検索を他の不動産会社に任せ、買主側の不動産会社と粘り強く交渉して、売主の希望価格条件で購入する買主を探す等の活動をします。
仲介手数料に関しては、成約時期や売却依頼方法に応じて値引きしたり、買主側の代理もする場合(双方代理)には、買主仲介手数料相当額を購入価格に上乗せするよう買主に要請するエージェント会社もあるようです。
市場最高値(高値売却)はどのように引き出されるか?
市場の最高値は、すべての価格が出揃って初めてわかることです。「高値売却」が市場の最高値を指すのであれば、すべての可能性を比較する必要があります。/たとえば買主側の不動産会社3社からの価格が、3社とも売主希望価格と同額なら、「売主希望価格朴市場最高値」であり、もっと高く売れる可能性があります。
3社すべてが売主希望価格に届かない場合は、「売主希望価格に最も近い価格を高値として3社で締め切るのか」、追加受付する場合は、「いつまで何社まで受け付けるのか」等の線引きはむずかしく、追加受付しても売主希望価格に届かず、売主希望価格に最も近かった買主にも辞退されることになると、買主側の不動産会社も本気で買主を紹介しなくなります。
一方、「不動産オークション取引(ポスティング方式)」は、平均60件以上の買主候補に購入を打診して入札期日に一斉入札を行ない、最高値の入札金額をもって落札とします。すべての入札が売主希望価格に届かない場合は、最も近い価格を入札最高額と決定し、売却に応じるか否かは売主の任意となります。一斉入札なのですべての価格を比較し、市場最高値を引き出せるのです。
たった1分程の入力で、最大6社から無料で査定を受けることが可能。
1社のみに査定を依頼して売却を進めることがありますが、不動産会社によって査定額はまちまち。300万円~500万円、それ以上違うことも普通。複数社の査定を行うことは必須です。