不動産の売却価格の査定方法 「取引事例法」と価格設定
事例の数と事例の成約時期
たくさんの事例がある物件であれば精度の高い査定ができますが、たった1つだけしかない場合、その事例による査定の精度は低くなります。 もちろん、事例が多ければ成約価格の平均を出してみることで、より精度の高い査定が可能となります。ただし、事例の成約時期が直近であればいいのですが、3年前、5年前となれば、不動産市場の動向も変わっており、あまり参考にならないでしょう。売主の背景がわからない
売主が物件を売りに出した理由は、データベースに記録されません。しかし、この売主の背景は価格を決める際にきわめて重要です。 お金に困っていて今すぐ売りたい売主さんだった場合は、値段を下げてでも早く売りたいため、市場価格で勝負せずに少しでも早く売れるように売り出し価格を下げます。 このため、事例価格は市場価格より安い可能性が高いでしょう。逆に余裕がある売主さんの場合は、気長に少し高めの値段から売りに出します。そして、いいご縁があればいい値段で売れます。 このため、事例価格は少し高めとなります。このように価格には、「売主さんの背景」が大きく影響するのです。また、最初にもお話ししましたが、不動産売買は売主と買主があって成立するものです。 そして、そこに市場が形成されます。ですから、いくら精度の高い事例を参考にしても「売りに出すまでわからない」というのが本当のところです。しかし、それでは値段の考えようがありません。 だから事例を参考にして、たたき台を作るのです。よく売主さんの中に「同じマンションのあの部屋はこれくらいで売れたから、私の部屋もこれくらいで売れるだろう」と決めつける方もおられますが、それは非常に危険です。 それはあくまで「事例」であり、売主さんの背景まではわからないからです。また、住宅ローン残高によっては「これ以上の価格で売らなければいけない」ということもあるでしょう。過去の事例を参考にしながら、売主さんの置かれた状況、お金の問題、そして売主さんの売りたい値段などを総合的に考えて、査定の値段を決めていくのです。 それでは、不動産屋が提示する「査定額」をどのように参考にし、どう売り出し価格を決めていけばいいのでしょうか。それが次に説明する「3つの価格を決めること」です。話を続けましょう。不動産の査定は3つの価格を設定する
査定書をたたき台に、不動産屋と相談をしながらあなたのマンションを売りに出す価格を決めていきます。その際、- 「売ることができる価格」
- 「売れる価格」
- 「売りたい価格」
①売ることができる価格
ここまで下げれば、すぐ買い手がつくであろう価格を指します。また、最低限これ以上でなければ売る意味がない、価格の下限値です。 例えば、住宅ローンの残高が1800万円で、その他仲介手数料などの諸費用が60万円とすれば、合計1860万円以上で売らなければ費用の持ち出しになります。負担できる自己資金の限度が40万円とすれば、「1860万円マイナス40万円」で、1820万円が売ることができる価格の最低ラインとなります。②売れる価格
不動産屋の査定額を指します。売りに出し、実際に買主と成約できるであろう価格のことです。③売りたい価格
売主として希望する売却価格のことです。価格の根拠は、ひとまず置いておきます。この3つについて不動産屋と相談しましょう。たいていの場合、この3つの価格は「売ることができる価格」が一番低く、「売れる価格」が中間、「売りたい価格」が一番高くなります。 例えば、住宅ローンの残高や仲介手数料などの諸費用を計算してみると、最低2200万円で売る必要がある場合で、不動産屋の査定額は2400万円。売主自身が、これくらいで売れてほしいと思っている金額が2600万円とします。すると、3つの価格は以下のようになります。3つの価格を設定する理由
売り急がなくてはならない状況に置かれている場合は、「売りたい価格」から売る時間はないはずです。 とりあえず、今すぐ「売れる価格」で売りに出すべきで、早急に買主を見つける必要があります。 逆に、資金的な余裕もあり売り急いでいない場合、時間がかかっても高く売りたいということであれば「売りたい価格」でじっくり勝負して、いいご縁を待つこともできます。 しかしほとんどの売主さんは、「できるだけいい条件で売りたい。でも早く売れる方がいい」と考えます。査定を持ってきた不動産屋は、「この査定額で売りましょう」と言ってきます。 でも、もし不動産屋のいう価格で売ってしまった後、「ああ、もうちょっと高く売れたかも」と後悔しないためにも、3つの価格をもとに「売る戦略」を考えておく必要があります。合わせて読みたい記事
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